菅平高原観光協会

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INTERVIEW

スキーヤーの佐々木明が語る
エクストリームな環境を生き抜く「食」
聞き手:SUNSHINE JUICE代表コウ ノリ

January.29.2020

写真・文/中島良平
取材協力/bar moonshine kanda

オリンピック4大会に出場し、アルペンスキーヤーとしてW杯でも日本人最多となる3回表彰台に立った経験のある佐々木明。2014年のソチ五輪終了後には競技からビッグマウンテンスキーへと転向し、世界各地の難攻不落の山を滑る姿を映像に残す『AKIRA’S PROJECT』を継続する。10代の頃から大会などで菅平に通い、2018年より日本スキー連盟アルペン競技部門のアドバイザーも務める彼は、「晴天率が高く、気温も下がるので水を撒いた後に水分が抜けて雪面が硬くなるのでトレーニングに最適な場所」だと表現する。そんな佐々木をトークに招いたのが、コールドプレスジュースを日本に紹介した先駆け的存在であるSUNSHINE JUICE代表のコウ ノリ。「健康」をテーマに行われた対談には、「勝つ」ためのヒントが隠されていた。

トーク会場は神田のbar moonshine。Sunshine Juiceのコールドプレスジュースを使用したカクテルを楽しめるバーだ。

コウ ノリ:僕は野菜が好きで、シンプルにいい野菜を絞っただけのジュースを飲むと体の感覚がすごくいいので、それをみんなに知ってもらいたいと思ってSunshine Juiceを始めました。健康って何なのかというと、ただフィットネスとか何を食べたらいいとかではなくて、アプローチは色々あると思っています。スキーヤーの佐々木明さんと出会って、僕は生き方とか考え方とか、体から出てるバイブレーションとかもすごく好きなので、そんな明さんにとっての「健康」について話を聞きたいと思って、今回トークにお招きました。

佐々木明:自分もいつもヘルシーなわけじゃなくて、不節制するときもありますけど、そうすると吹き出物とかになって体に出るし、何よりも心に出ます。とりあえず空腹のストレスを解消するための食事。それって人間的によくないと思うんですよ。それは昔から感じていました。

アスリート時代の食への意識、山岳スキーヤーとして必要な食について丁寧に語る佐々木明。

ノリ:体に取り入れるものの影響は、たしかに心にも出ますよね。

佐々木:選手時代に栄養士の人に「肉を食べないとアスリートの体は作れませんか?」って聞いたことがあるんですよ。「当然です、肉を食べないと適切な増量もできません」ってすごい自信満々に返ってきたんです。教科書で学んだだけ有無を言わさずそう話す感じにカチンときて「これで肉を食べずに減量せずに体をキープできたら、それは仮説でしかないということですよね」と、その日から1年間、動物性のものを一切口にしないヴィーガンになることを決めたんです。自分は基本的に肉も好きだし、体への影響を知りたいという動機だったから1年限定で。実際に試してみたら、気持ちがすごく大らかになって、体もめちゃめちゃ動いた。フィーリング的に明らかに体が軽かったですし、データを取ると、俊敏性やパワーなども上がっていた。

ノリ:うちのお店も格闘家は多いですし、メディアで「疲れたら肉」「肉喰ったら強い」みたいな伝えられ方は多いと思うんですけど、実際に野菜だけで体を大きくしている人にも何人も会ってます。明さんは今スキーの育成にも携わっていますが、食のことも伝えますか?

自らランナーでもあるコウ ノリは、アスリートの視点から佐々木に質問をする。

佐々木:食が気持ちを作るという話はよくしますね。アスリートとしてオリンピックを目指すとかメダルを目指すとなると、僕の場合は365日×4年でスケジュールを考えるんです。どこで風邪を引いて免疫をつけて、どこでトレーニングの強度を上げて、どこにピークを持ってくるかというように。天気の都合で練習量にムラが出ることはありますが、レースの1戦目で結果を出すためには、そこまでに自分は1日300から400ターン滑ることを目標にして、何10万ターンをこなした時にこのレベルに達する、というのがデータに出るわけです。毎日の食べ物をきちんと考えていると、規則正しい生活を送るためのマインドセットにつながるということを若い選手たちには話しますね。

ノリ:明さんの食との向き合い方は、アルペンスキーヤーから冒険家スタイルになっても基本的に変わっていませんか?

佐々木:アスリート時代は結果を出すために生きているから、24時間365日、競技のことを中心に考えられます。だから遊びにも行かなかったし、結果のためにご飯を食べてた。でも今みたいな冒険になると、環境が環境だから食える時に食っておかないと動けなくなる危険があります。山で乾麺しか食べられないけど、それでもただ動ければいい。エネルギーとしてとにかく入れておく、みたいな。山には最低限の荷物で行くから、テントも持たずに雪に穴を掘って雪洞を作って寝るんだけど、そんな時に空腹でいたりすると、あらゆるマイナスなことを考えるわけです。滑れたとしてもここで転んで岩にヒットしちゃうんじゃないかとか。

自らビッグマウンテンを滑走する姿を映像に収める『AKIRA’S PROJECT』の一部映像プロジェクションも行われた。

ノリ:食事の摂り方は変わったのかもしれないけど、食べることが気持ちとか脳に直結しているという部分は一緒なんですね。

佐々木:そう。僕は映像を撮るために谷川岳に継続的に通ってるんだけど、山岳警備隊の人たちが入隊したときに通らなければいけない道があって、谷川岳の麓の店でカレーライスを3キロ食わないといけないんですよ。それができて初めて山の男として認められるという。僕もやりました。本当に腹パンパンになりながら、ギリギリでどうにか食べて歩くのも辛いんだけど、次の日に山に入って、一寸先はホワイトアウト、爆風で何も聞こえなくて緊急避難ってなったときに、腹にまだものが入ってるからマイナスなことを一切考えずに満たされていたんです。すげえ幸せで、休めたことでホッとしてたりするわけです。

ノリ:海外だとまた手にいれられる食材も違うでしょうし、色々と過酷な環境に出会ってますよね。

佐々木:モンゴルの最西端の最奥地に行ったとき、モンゴルは田畑もなくて木々や草が生える環境じゃないから、カロリーや栄養を計算して、本当に少しの野菜と、ヤギのミルクと肉、塩、揚げパンみたいなものを持って行ったんですよ。ヤギも一瞬で恐怖を与えずにシメた肉だから、すごく美味しくて、食べた瞬間に体が温まる。バランス的にはあまりよくないかもしれないけど、自然のものを必要量は摂れていたから、動き続けることができたと思っています。

ノリ:自分が摂るべきものを把握して調子がいい時の状態を見つけられると、自分を幸せな状態に持っていけるわけですよね。そのモンゴルの話にしても、やっぱりめちゃくちゃ食の話が重要だってことが伝わってきました。

佐々木:そう、食を変えると豊かになってきますよ。レースをやってたときに体重調整とかのためにサプリメントを摂ってたこともあったけど、勝つためだけにそれをやっていたから、エゴイスティックで本当によくなかったと思いますよ。今は自然とどうやったら調和できるかっていうことを考えてスキーしてるから、モチベーションが全然違いますよね。

レース転向後のライフワークとして、佐々木明が立ち上げた『AKIRA’S PROJECT』。スポンサーをつけずに自分が本当にやりたい形で、行きたい山を滑った映像がDVDとなった。ノルウェーのロフォーテン諸島、モンゴル、谷川岳などで一瞬の晴れ間を見つけ、雪崩を避けて滑走する姿が収められている。『AKIRA’S PROJECT』を続けるトレーニングのため、さらには、日本スキー連盟がアルペンスキーのナショナルトレーニングセンターとして活用する菅平での後続育成のため、佐々木明はこれからも菅平に足を運び続ける。

佐々木明(ささきあきら)
スキーヤー、SAJアルペン競技アドバイザー、 EMUSIオーナー。北海道北斗市出身。「家族の楽しみ」として両親と楽しむ旅行の一部として3歳でスキーを始め、16歳でアルペンスキーの日本代表に選出される。19歳で世界選手権、その後W杯でデビュー。オリンピックには4大会連続で日本代表に選ばれた。競技転向後は、スキーヤーとしてバックカントリーを主な活動の場とするほか、アイヌ語で「刀」を意味する「EMUSI」の名を冠するゴーグルブランドを運営、2018年に全日本スキー連盟のアルペン強化アドバイザーにも就任するなど、スキーを軸に多方面で活躍する。
https://www.instagram.com/akiraexploring/

コウ ノリ
サンシャインジュース代表。アメリカ、日本、台湾での生活を経て日本初のコールドプレスジュース専門店「サンシャインジュース」をオープン。「リアルジュースで体が目覚めるこの素晴らしい感覚を一人でも多くの人に知ってもらいたい」という思いで2013年頃からイベント出店を通してジュースの販売を開始。原料である野菜の仕入れ先や流通のことを勉強しようと、農家さんのもとを訪ね、「規格外の野菜を仕入れることで、コストを抑えながらも生産者の顔が見える新鮮な野菜ジュース作りができるのでは」と閃き実践。現在都内に2軒の実店舗、オンラインシショップ、ヨガ・フィットネススタジオへの卸売でサンシャインジュースを展開。商品のレシピは全て自身で開発している。趣味は持久スポーツで、フルマラソンは毎年サブスリーを達成しながら、STAY JUICYな生活を啓蒙する。 

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