菅平高原観光協会

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INTERVIEW

中野ジェームズ修一
Mind Control Myself vol. 1
モチベーションの正体

July.5.2019

日本のパーソナルトレーナーのパイオニア、中野ジェームズ修一が語る「こころ」のお話。第1回は「モチベーション」について。5月に入り「モチベーションの低下を感じる」という人も多いかもしれません。しかし、モチベーションとはいったいなにか? 中野氏に聞きました。

取材・文/寺野典子

モチベーションの意味

私は「スポーツモチベーション」の最高技術責任者という任についています。それは「モチベーション」に強いこだわりを持っているからです。トレーナーである前にモチベーターでありたい。クライアントにやる気を起こさせるための専門家でありたいと考えています。

現在日本でも、「モチベーション」や「モチベーター」という言葉は、アスリートだけでなく、ビジネスパーソンをはじめ、さまざまな人たちが使うようになりました。しかし、その多くの場合、「モチベーション」という言葉の意味を「やる気」というような解釈で使われますが、それでは「モチベーション」の意味を正確に捉えてはいないと感じます。

モチベーションは、ラテン語 で「動き」の意味を持つ「motive」と同じ、「motivate」から派生した言葉なので、「動き」がなければなりません。私は「モチベーション」というのは、動因と誘因とを合わせたものだと考えています。

動因とは、「こうありたい」という欲求や願望であり、いわゆる動機です。しかし、これだけでは、動きだしてはいないので。モチベーションとはならないのです。そこに「動機を叶える手段」となる誘因が存在して、初めて、行動に移し、モチベーションされたことなります。

彼女が欲しいという動機がある。しかし、女性との出会いは少なく、彼女を作るためにどう行動していいのかわからない。そんなとき、新たな女性との出会いがあったとします。これが誘因の種となるんです。「声をかけてみる」「連絡先を訊いてみる」と、行動を起こせば、モチベーションされたということです。

クライアントにやる気を起こさせるための専門家でありたい

我々、トレーナーの仕事は、クライアントから「動因」を聞いて、それを叶えるための手段、「誘因」を提示することです。だからこそ、「モチベーター」となれるのです。本来モチベーターというのは、明確な手段、誘因を提案し、動かせる人間のこと。ただ「頑張れ」「負けるな」とあおり、やる気にさせる、集中力を高める人間ではないのです。

しかし、どんなに緻密な誘因、プログラムを構築しても、クライアントが動き出さなければ、意味はありません。私はトレーナーとして、フィジカルトレーニングの内容に携わり、クライアントを動かす誘因を提供し、クライアントのモチベーション成立に貢献したいと考えています。

動因と誘因を考える

私が卓球の福原愛さんのトレーナーを務めていたとき、「リオ五輪」という愛さんの動因に対して、誘因として、52項目のやるべきことを提示しました。「勝ちたい」という気持ちだけでは結果は出ませんから。筋力を何パーセントアップするとか、段階を踏みながらレベルアップしていくプログラムです。それを本番1カ月前にはすべてクリアしました。そして、「これだけやったのだから、たとえ結果がでなくとも悲しくない」といえる準備をしていたので、リラックスし、本番に挑めました。結果シングルでは3位決定戦で敗れ、メダルはとれなかったけれど、費やした時間を後悔することはなかったと思います。

「モチベーションが低下した」「モチベーションが上がらない」

そう感じている人がやるべきことは、まず、ご自身の動因を自覚することです。「どうなりたいのか」という目標を整理してください。長期的な夢でも構いませんが、たとえば「明日どうしたいか」といった短期目標でもよいでしょう。そのとき、メモに書きだすと、その後の作業もわかりやすいので、おすすめします。

動因を書き出しただけでは、モチベーションされたことにはなりません。重要なのは、それを達成するための、誘因を考えることです。この誘因がわからないと動き出せないので、「やる気が起きない」という感覚になってしまうのかもしれません。

ご自身で思考し、誘因を導きだす作業でも、メモが役立ちます。「なにをすべきか」を書き出し、視覚化することで、頭の中を整理し、優先すべき点などが明確化されるでしょう。

身近にいる先輩や上司、友人などに相談して、自身の「モチベーター」を探すという手段もあります。

動因を掲げ、誘因を導き、そして行動したとしても必ず結果が伴うわけではありません。そういうときは、再度、何が足りなかったのかを考えればいいだけのことです。結果が出ないことで落胆している場合ではありません。現状を把握し、考察し、誘因を修整するのです。実際に動いたことで、以前は見えなかったこと、わからなかったことを発見できているケースもあるでしょうから、誘因はどんどんアップデイトできるでしょう。

闇雲に頑張るだけでは、モチベーションされたとはいえない状態です。重要なのは「どのように」という手段です。その手段で、努力の違いが生まれるのです。

「動因も誘因もわかっているのに動けない」

そういう人は、それぞれをもう一度検証し直すところから始めてください。それはきっとご自身と向き合うような作業になるはずですが、そういう時間が新しい可能性を引き出すかもしれません。

自身と向き合う作業が、新しい可能性を引き出す

中野ジェームズ修一
(なかの・じぇーむず・しゅういち)

米国スポーツ医学会認定運動生理学士
渡米をきっかけにパーソナルトレーナーの存在を知り、勉強を始める。帰国後、日本ではほとんど認知されていかなったパーソナルトレーナーとして、活動の場を広げたパイオニア。フィジカルトレーニングの現場で、心理学や精神分析学をも活かす仕事は、多くのアスリートから絶大な信頼を集めている。主な著書は『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(大和書房)、『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ』(徳間書店)など。累計売上は100万部を突破。東京神楽坂にある会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」最高技術責任者。

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